小説書いったー

2022年5月28日に作成 #趣味
420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。

※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
このTterはアーカイブのみ閲覧できます
  • 紅茶とは、私にとって即ち大人であった。
    湯気のたつ色つきの湯を啜り、菓子と共に嗜む姿こそ真の大人。
    成長という優越に浸りながら飲む紅茶は、きっと驚くほど美味なのだろうと私は信じて疑わなかった。

    けれど。
    けれどどうだろう。
    実際口にした紅茶。
    それは正しく"湯"であった。
    よく言えば色の着いた白湯である。
    確かに何かしらの匂いはあるが、紅茶特有の渋みだの甘みだのは感じない。
    なんか匂いの着いた白湯である。
    淹れ方を間違えたわけでも、飲み方を間違えたわけでもない。
    つまりは、これが憧れという皮を脱ぎ捨てた紅茶の真の姿というわけだ。
    私は絶望した。
    なぜ現実はこうも残酷なのかと。
    その出で立ちだけで見事に幼少の夢を砕いた残念さにはもはや感服するばかりである。
    紅茶初心者で"フレーバーティー"などという存在を知らぬ私は、それからしばらく紅茶への失望と怒りをストレートの色つき白湯で流し込むこととなったのである。
  • バイト帰りに歩いていたら、突然日陰がなくなった。
    何事かと空を見上げたら、雲一つない空にミズクラゲが泳いでいた。
    花みたいに見える胃に入道雲がみっしり詰まっていて、せっかくの日陰を食いやがってと睨みつける。
    数日前までは雲を食い尽くすくらい多くなかったのに、急激にボケ始めたばーちゃんが言った通りお彼岸を過ぎたら急に増えてきた。

    ばーちゃんが若かった頃はこいつらも海にいたとかなんとか言ってたけど、繁殖期にアホみたいなサイズのポリプをあちこちのビルにくっつけて、そこから分裂した子クラゲが空に飛び出して一面覆い尽くすのを見すぎてボケが酷くなっただけだと思ってる。
    焦げ付きそうな暑さにエチゼンクラゲが来たらいいのにと考えたけど、毒をたっぷり抱え込んだ触手が重すぎて垂れ下がるのを想像してげんなりした気分になる。

    コンビニに寄ってアイス買って家帰ってコールドベッドで日が落ちるまで寝よう。
    自動ドアをくぐった瞬間、鉄臭さとウリクラゲの広がった口と光る櫛板が
  • ずっと脇役の人生だった。
    学生時代、私が好きになった人は私の美しい友人に一目惚れして彼らは恋人になった。幼い頃から、何人かで撮った写真で私はいつも暗い顔をしてすみっこに寄って下を向いていた。大人になった今も、会社でさまざまな雑用を頼まれては淡々と過ごす毎日。もう心が限界だったのだと思う。

    ある日突然、当日の朝に有給を取った私は会社へ行く方向と反対のガラガラの電車に飛び乗った。普段なら絶対に選ばない真っ白なワンピースと大きな麦わら帽子とサンダルを乗り換えの駅構内で買い、電車に揺られること1時間半。
    駅から出た私は呆然としていた。

    「海だ…」

    強い日差しを浴びて、真っ青な海は燦然と光り輝いている。
    肌にぺたりと張り付くような潮臭い風が吹いて、からかうように私の髪をさらりと撫でていった。

    夏は始まったばかりだ。
  • Tter主(.q9ZBG)2022年7月21日
    みなさまいつも色々な小説を書いて読んで下さり有難うございます。
    先ほど「お題で小説書いったー」を作成しました。
    お題があった方が書きやすい方に書いて頂いたり、一つのお題でいろんなお話を読みたい方に読んで頂けるものになると嬉しいです。
    こちらのほうもよければよろしくお願いします。
  • 懲役の役とはレタスの収穫だった。おれは刑務所に入るまで、レタスがどんな風に栽培されているのかなんて考えたこともなかった。屋台のメキシカンサンドに挟まってる葉っぱでしかなかった。ところがどうだこのレタス畑。レタスが主役でおれたちが召使いだ。おれたちはレタスをひたすらに収穫した。懸命に収穫した。もう、看守の目なんか関係なかった。レタスのみずみずしさ、それは神々しくもあった。しかし、おれたちにレタスを食べる資格はなかった。あのレタスを!
    刑務所から出たおれは二日後にドラッグストアを襲って捕まった。またレタスの収穫の役につければいいのだが。
  • 【アナログ人間】

    ブレインは瞬く間に世界中に広まった。スマホと連動して自分の記憶の一部をクラウドに預けるサービスだ。当初は『記憶力として本人の実力ではない』なんて言われたが、もうそんな声は聞かない。かく言う俺はブレインを使っていない。スマホを使いだしてから実家の電話番号を忘れてしまったショックから、人間、少し不自由な方が脳にもいいと思っている。アナログ人間だなあと友人たちは俺を笑ったが、その友人たちは今地面のあちこちに転がって呻いている。
    「もしもし、ああ母さん。うん、僕は大丈夫」
    ブレインサービスの大規模な故障。すっかりブレインに頼り切ってしまった多くの人は、『歩き方』さえ忘れてしまって、街はいま立つこともままならない人間で溢れてる。
    忘れっこない、そう思っていた実家の電話番号を忘れたあの日を思い出し、僕は僅かに震える声で笑った。

    「電話番号?覚えてるよ。うん、僕も母さんと同じで…アナログ人間だからさ」
  • 和尚が「ご恩を忘れぬことです」というので、恩とはなんですかと訊いたような気もするが、はたして訊いたのか訊かなかったのか、訊いても答えがなかったのかとんと思い出せぬ。おれも人なみに大きくなって、この世のことのおおよそが自由になったような気がして悠々と生きるようになった。おれはおれが大きくなって、おれなりの人生を歩んでいて、いったいだれに恩を感じることがあろうかとも思った。しかし、夜毎になんとなくあの和尚の言葉がよみがえるので、おれはいよいよこらえきれなくなって、あの古寺に行くことにした。その道中でひわいな形の地蔵がないがしろにされていたので、掃除してやって花を供えると、あの和尚の声がした。「恩を忘れていないようで、結構なことである」。だれのだれに対する恩なのか。おれにはよくわからない。おれはにぎやかしい街に踵を返した。街の夜はいつまでも明るかった。おれは心ゆくまで酒を飲んで、眠たくなったので眠りについた。
  • 社会人になって先輩から口を酸っぱく言われたことがある。残業はしすぎないこと。残業ばかりしてると「ザンギョウの成れの果て」になるから、と。
    そんな先輩は残業しすぎて「ザンギョウの成れの果て」になり、奥さんが面倒を見ているそうだ。
    奥さんに大変じゃないですか?と聞いたら、snsに面倒の様子をアップしたらバズったとかで意外と苦ではないらしい。
    画像は一度だけ見たことあるけど、確かに先輩の身体を覆う鱗はキラキラしてて映えそうだなとは思った。
    なによりも、先輩の顔があの頃よりもずっと穏やかだったので私は安心したのだった。
  • じじじ、じりじり、じゅーわじゅわわ、この音が聞こえると、また面倒な時期がやってきたと私は憂鬱になる。私は押し入れから豚型の蚊取り入れと団扇を取り出し、台所の下にしまっていた蚊取り線香にシュボッとマッチで火をつけ、そっと豚に食わせた。
    暫く団扇でパタパタて煙を外に向けて煽っていると、ぼと、ぼとぼとっ、と音がしだした。
    今年は割と上手く行ったな、とマスクと耳栓をつけ、カニバサミとゴミ袋を手に庭へと出ると、そこには例年通り、クチナシの木の麓に大小様々な口が落ちていた。
    落ちている口からはまだ弱々しく「ギギ…ギリ…」と音が漏れている。
    私はそこに蚊取り線香の煙を吹きかけ、口が動かなくなる事を見届けた後、カニバサミで摘んでゴミ袋に入れたのだった。今年はこの作業が1週間で終わればいいのだけど。
  • ※動物を捨てる描写があります
  • タクシー運転手は言った。「シートベルトお願いします」。乗客は言い返す、「なんや、堅苦しいこと言うなや」。やれやれ、関西から来た客はいつもこうだ。ここは大阪ではない。首都東京だ。「お願いします。シートベルトをおつけにならないと、出発できません」。客、さらに絡らむ口調になって、「おい、お客さまなめんとけよ。文句いわんと、とっとと出さんかい!」と言う。仕方なく、運転手は非常レバーを引いた。車の屋根が吹き飛び、後部座席が空に向かって飛んでいく。「やれやれ、屋根も座席もただじゃないんだぜ」と運転手。飛んでいった後部座席とその客は地球の衛星となり、やがて月と呼ばれるようになった。
  •  彼女の瞳には、人間がゾンビに映るらしい。そのことを明け透けに言うものだから、よく電波女だの何だのと陰口を叩かれているところを見掛ける。
     僕はそんな彼女と仲良くしている唯一の人間──彼女から見るとゾンビ──である。彼女曰く「貴方は右目がぶら下がってて、頭から頭蓋骨がはみ出してる。要するに、どこにでも居るただのゾンビね」とのことだ。
     ある日の昼休憩。いつものように部室棟のベンチでパンを頬張っていると、彼女がやって来た。
    「ねぇ、貴方はどうして私の話を信じるの?」
    「どうしたのさ、急に。……信じるも何も、そもそも疑いようがないじゃないか」
     そう、疑いようがないのだ。何故なら、彼女の瞳に映るものが彼女以外には分からないように、僕の瞳に映るものもまた、誰にも証明することはできない。
    「だから、僕は君の話を信じるしかないんだよ」
     そう言うと、彼女──僕から見るとただの骨──は嬉しそうにケタケタと笑った。
  • こくりこくりと船を漕ぎつつ、1文、1文と物語を読み進めてはページをめくる。
    本当は目がしっかりと開く時に読みたかったのだが、返却期限が近づいていることを思うとそうもいかない。
    「もう眠ろう」と囁く睡魔とどうにか戦いつつ、頭の中に本の中の世界を描いた。
    主人公の剣士が猫で民衆と和解し、ここで大事になるのがカツオなのだが、それを神に捧ぐことで世界は塩に還り、ここで言う神とは猫で、すなわち溶けだした地球がブラックホールの欠片と砂糖を一掴みで世界的なコック帽が完成して…
    ああいけない。
    目から入った情報が頭の中を縦横無尽に駆け巡り、中途半端な文章の欠片を手当たり次第に繋げはじめている。
    これはもういよいよダメだろう。
    残念だが、明日また読み返す他ない。
    ため息をついて本を閉じた視界に、真っ白なコック帽が映る。
    これはかなり絶望的ではないだろうか。
    何故って、この景色が夢でないのなら、私はコック帽に含まれた一欠片のブラックホールに飲み込まれてしまうからだ。
  • 「不老不死?」
    僕は大学の先輩と旅行に来ていた。
    場所は小さな田舎町。何時間もかけて来たにしては何もない。しかし物好きな先輩のことだから何かあるのだろうと思ったら、案の定だ。
    先輩は突然不老不死なんて言い出した。

    「ここには徐福の墓がある」
    徐福。
    不老不死の霊薬を求めた秦の方士。本当に日本に渡来したのか怪しいが各地に伝承がある。
    この町もそのひとつなのか。

    「俺だって信じてないよ。でも霊薬があるって聞いたら気になるじゃん」
    「はぁ。……土産屋に売ってるんスね」

    僕らは涼みがてら土産屋に入っていた。
    目の前には「天台鳥薬」と書かれたお茶の葉が売られている。
    暫く立ち話をしていたら店の人が試飲させてくれた。独特な味がした。

    「早速墓を見に行くか!すみませんコレひとつ買います」
    先輩は“霊薬”を一袋買って観光へと乗り出した。
    口の中はまだ薬っぽい。不老不死とはいかずとも体には良さそうだ。
    「あ、先輩ちょっと待って」
    なんだか面白そうなので僕も“霊薬”を一袋購入した。
  • 高校球児だったころの夢を見る。あとワンナウトで初めての三回戦進出だ。そこで、セカンドを守る自分のところにポップフライが飛んでくる。簡単に処理できる打球だ。しかし、身体が全く動かない。動かないまま、白球は自分の後ろにポトリと落ちる。ランナーが還る。送球が逸れる間に二人も還る。試合に負ける。「ドンマイ!」と声をかけるチームメイトの目は冷たかった。そこでおれは目を覚ます。おれは俳句部員だったのに、なんでこんな夢を見るんだ?
  • 殆どの場合、雫が滴り落ち、水溜となる様子を誰も目に留めることは無いだろう。
    ただ、水溜まりとなった雫は蒸発し、気体となり、再び雨となり降り注ぐ。
    水は雨であり、気体であり、悲喜交々の表情を彩る涙でもある。
    故に水は水以外にはなれない。
    それは世界をくまなく循環し続ける水の譚(はなし)だ。
  • 願望

    通勤の途中
    いつもの時間、いつもの道
    サラリーマンはつまらない
    もっとトキメキを
    パッと、目が覚めるような
    子ども時代は冒険家に憧れた
    「神様なんか、いねーよな」
    ドキドキな毎日、懐かしい

    帰宅時間はまちまちだ
    今日はつかれた
    不規則な時間、いつもの道
    家に帰ったら
    風呂でサッパリしたいな
    いや、とにかく寝ようかな
    疲れMAXで風呂は危険だ
    うん、帰宅したら、すぐ寝よう
    歳を重ね蓄積したストレス
    判断が面倒になるから危険だ
    気がついて良かった
    後で紙にかいて貼っとくかな
    「疲れたら寝るべし、自分」

    妄想、戒め一区切り。
    ハッとした
    周りの風景が、違う
    どうやらのりすごしたようだ
    「うわ。ここ、どこだよ」
    慌てながら思った、
    本当に疲れてる
    折返しをまち、乗車
    落ち着け、自分。
    間違えに気がついたら
    冷静に。分岐点に戻ればいい。
    いつもの駅へ
    到着。
    妙な安心感。
    少しドギマギしつつ帰宅
    寝転んだ。
    「ふう、今日は散々だったけど
    いつも通りに戻れて良かった」
  • 雨がザーザーと降る音を聞きながら、布団に寝転がって色々な事を考える。汗ばんだ体に冷房の風が心地いい。

    地球温暖化。こうしてる今も、私、いや人類は地球を破壊し続けている。
    世界中で起こっている争いや犯罪、いじめはなくならない。

    何もできないちっぽけな自分に、できる事などあるのだろうか。私は目を閉じて「世界が平和になりますように」と陳腐な事を祈った。
    ザーザーと鳴り止まぬ雨の中、そっと目を閉じる。


    ずいぶん長く眠ったあと、私は小高い丘の上で目を覚ました。雨はもう止んでいる。
    飛んできた白い鳥が、私に語りかけてきた。

    「世界は平和になった」

    世界は全て海になったようだ。
    私が祈ったのは神だったのか悪魔だったのか、今となっては分からない。
  • 「暗い話書きすぎって言いましたよね」
    「死のうと思うんです」
     編集の顔が引き攣り、さっきからずっとテーブルを叩いていたペン先が止まる。
    「…あの、パワハラとかそういう理由じゃないですよね」
    「はい」
    「でも、あの、死ぬとかそういうのはよくないですよ」
    「はい」
     はい、はぁ、はい。それだけ返してビルを出る。帰り道、いつものコンビニでしこたま酒を買う。去年も出てた紅茶味のクラフトビールに青りんご味のストゼロ。埃が積もったままのウイスキー。去年と違うのは店員だけだ。
     ストゼロを飲みながら歩道橋を上がり道路を見下ろす。流れ星のように走り去るテールランプは滲んで見えた。死ぬ勇気もなければ明るい話を書く勇気もない。
    「暗い話がなんだよっ」
     通りすがりの親子がビクッと肩を揺らし、慌てて階段を降りていく。
    「暗い話が悪いかよっ」
     中身が半分ほど残った缶を振りかぶって投げ捨てる。中身を飛び散らせて空を舞う姿は彗星みたいだ。
     綺麗だった。
  • 自分の中にある好意という感情が、ふくれに膨れて暴走している気がする。
    一人の人間の行動に一喜一憂し、胸を痛め、時に精神の深い面にまで影響を及ぼしてしまうのは考えものだと自分でも理解している。
    心を平穏に保つため、この感情のきっかけとなる人物から距離を置くべきなのだとわかっていても出来やしない。
    あなたが誰かに肯定されれば私の心は浮き立ち、否定されれば胸が裂かれたように苦しい。
    この苦しさを抱え続けるくらいなら、いっそ死んでしまいたいと思うほどに。
    ああ、普通じゃない。
    何ひとつとして普通ではない。
    せめてあなたが万人に肯定される人物であれば。
    もしくは否定されない人物であればと思うけれど、でもそれはあなたではない。
    自分のエゴと欲望で作り上げた幻想には惚れ込めない。
    けれど願わずにはいられない。
    どうか、あなたが誰にも嫌われませんように。