• 「毎日お疲れさん」

     とある酔っ払いがチューハイ片手に月に乾杯した。殺風景なアパートのベランダに腰掛け、袋に手を突っ込んでガサガサと音をならす。
     個包装の袋を破くと、まん丸な黄色い飴をつまみあげて月に重ねた。本物の月は、飴と違って完璧な円ではないらしい。それもまた一興。

     ただの飴が、月の光を浴びてまるで月のかけらのようだ。小さな飴を口に放り込むと、爽やかな甘さと酸味が広がった。目を閉じて月光を浴びながら、酔っ払いの夜は更けていく。飼い猫がミャアと鳴きながら頭を擦り付けてきた。なめらかな感触が手に心地いい。

    「幸せって、案外こういう事かもしれないね」

     満ち足りていると思えば満ち足りているし、欠けていると思えば欠けている。どちらにしろ今夜の満月はとても美しく、月のかけらは甘い余韻を残して溶けた。
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  • これ好き(≧∇≦)
  • スレ主(toxABo)2022年9月10日
    返信先: @EBHd9Lさん ありがとうございます!
  • >とある酔っ払いがチューハイ片手に月に乾杯した。
    このフレーズすごく好き。派手さはないけどそこが良いね。ストンと胸に落ちてきました。何か月夜の絵画みたい。
    ホーム流し見してたら目にとまったのでコメ。素敵なお話をありがとう。ホッコリしました。
  • スレ主(toxABo)2022年9月11日
    返信先: @NLwipAさん コメントとても嬉しいです。思い浮かんだ情景を伝えたかったので、絵画みたいと言っていただけて嬉しい。ありがとうございます。