• 「滅び方を教えて(仮)」

    目覚めると、暗い穴倉のような場所で寝転んでいた。
    目覚めるまでの記憶は無く、ただ一々不快な事を言う女の声が響く夢が夢とは思えなかったので目覚めた。

    「人と自称する者よ、自らの正体を改めて知る為に目覚めなさい」

    訳が分からず、ムカついてそいつが実際に居るか確かめようとしたが、やはり夢なのか辺りを見回してもそいつらしき者は居ない。

    壁掛けの松明が部屋の入り口に立て掛けられ、その周辺が照らされていたから気付けたようなもので、暗い穴倉と言うよりは何処かの洞窟の一部のようだ。

    「要するに、自らイケ…って事か?生憎、そんな願望とか勇気…否、自棄や無謀は持ち合わせてないんだが」

    溜息を吐きつつ、この場所から抜け出す為に立ち上がり、松明を手に部屋を後にした。

    それが、俺にとって俺が滅びるまでの永遠の呪縛の始まり─【孤立と裏切りの末に討伐された、元哀れな人間だった魔王の復活と滅び】の、最初の一手になるとも知らずに…。