• 思えば色々あった。
    やりたいことほど上手くいかないとか、周りがすごい人ばかりで気後れするとか、周りと自分を比べては自分が惨めに思えてくるとか。
    いわゆる陰口なんてのも叩かれて、何度も砕けた心を歪ながらに修復しては、首の皮一枚ちまちまと繋いでしぶとく生き残る人生だった。
    自己肯定感も能力も充分に持ち合わせていない割に、無駄にプライドだけは人一倍で、高すぎる理想に追いつけない自分を更に嫌う悪循環。
    脆弱なメンタルと無才覚というあまりに無謀すぎる組み合わせを得て生まれてきた自覚がありながら、それでもなんとかやってきたけれど。
    人には限界があるものだ。
    心の器に溜まった「無理」がついに縁を超え、器ごと崩壊してしまう日が。
    今日がそうだった。
    何をどうやってもとけやしない数式と闘い、半泣きでテキストをめくっていたその時。
    「シュッ」という音と共に走った小さな痛み。
    指に滲む血。
    最後の小さな「無理」が器に零れ落ち、全てが崩壊する音が脳内を満たした。
    …あ、無理。
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