• こくりこくりと船を漕ぎつつ、1文、1文と物語を読み進めてはページをめくる。
    本当は目がしっかりと開く時に読みたかったのだが、返却期限が近づいていることを思うとそうもいかない。
    「もう眠ろう」と囁く睡魔とどうにか戦いつつ、頭の中に本の中の世界を描いた。
    主人公の剣士が猫で民衆と和解し、ここで大事になるのがカツオなのだが、それを神に捧ぐことで世界は塩に還り、ここで言う神とは猫で、すなわち溶けだした地球がブラックホールの欠片と砂糖を一掴みで世界的なコック帽が完成して…
    ああいけない。
    目から入った情報が頭の中を縦横無尽に駆け巡り、中途半端な文章の欠片を手当たり次第に繋げはじめている。
    これはもういよいよダメだろう。
    残念だが、明日また読み返す他ない。
    ため息をついて本を閉じた視界に、真っ白なコック帽が映る。
    これはかなり絶望的ではないだろうか。
    何故って、この景色が夢でないのなら、私はコック帽に含まれた一欠片のブラックホールに飲み込まれてしまうからだ。
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