•  彼女の瞳には、人間がゾンビに映るらしい。そのことを明け透けに言うものだから、よく電波女だの何だのと陰口を叩かれているところを見掛ける。
     僕はそんな彼女と仲良くしている唯一の人間──彼女から見るとゾンビ──である。彼女曰く「貴方は右目がぶら下がってて、頭から頭蓋骨がはみ出してる。要するに、どこにでも居るただのゾンビね」とのことだ。
     ある日の昼休憩。いつものように部室棟のベンチでパンを頬張っていると、彼女がやって来た。
    「ねぇ、貴方はどうして私の話を信じるの?」
    「どうしたのさ、急に。……信じるも何も、そもそも疑いようがないじゃないか」
     そう、疑いようがないのだ。何故なら、彼女の瞳に映るものが彼女以外には分からないように、僕の瞳に映るものもまた、誰にも証明することはできない。
    「だから、僕は君の話を信じるしかないんだよ」
     そう言うと、彼女──僕から見るとただの骨──は嬉しそうにケタケタと笑った。
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  • スレ主(zy0Cax)2022年7月17日
    (うえお久光さんの「紫色のクオリア」から着想を得たものです。素晴らしい作品なので物理学、哲学、量子力学等に興味がある方は是非)