• ずっと脇役の人生だった。
    学生時代、私が好きになった人は私の美しい友人に一目惚れして彼らは恋人になった。幼い頃から、何人かで撮った写真で私はいつも暗い顔をしてすみっこに寄って下を向いていた。大人になった今も、会社でさまざまな雑用を頼まれては淡々と過ごす毎日。もう心が限界だったのだと思う。

    ある日突然、当日の朝に有給を取った私は会社へ行く方向と反対のガラガラの電車に飛び乗った。普段なら絶対に選ばない真っ白なワンピースと大きな麦わら帽子とサンダルを乗り換えの駅構内で買い、電車に揺られること1時間半。
    駅から出た私は呆然としていた。

    「海だ…」

    強い日差しを浴びて、真っ青な海は燦然と光り輝いている。
    肌にぺたりと張り付くような潮臭い風が吹いて、からかうように私の髪をさらりと撫でていった。

    夏は始まったばかりだ。
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