• ジャンル:ホラー?

     かちゃり、と食器が音を立てる。真夜中の2時半。その音で覚醒する。またか、と思った。

     俺は、女の幽霊と同居している。ラップ音やちょっとした金縛りぐらいで特に害もないし、時折見える姿が美人だからというのもあり、お祓いなどもせずに今に至る。事故物件という話は入居時に聞かされていないし、管理人に確認してもそんな事実はないという。
     最初の頃は騙されているのかと疑ったが、祟りや呪いを信じていない性分が幸いして、徐々に気にならなくなっていた。むしろ、美人と同棲できるという下心が勝ったのか。

     かちゃり、かちゃ、かちゃり、がちゃん。

     おかしい。彼女はこんなにうるさく音を立てないはずだ。違和感に突き動かされるままに明かりをつけキッチンへ行くと、彼女が立っていた。
     その腕に、小さな赤子。
     そして俺は、初めて彼女の声を聴いた。

    「ほら、パパにご挨拶して」

     母親になった彼女の声が虚ろに響いた。
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