• 田舎の礼拝堂。
    合唱団が賛美歌の練習をしている。歌声の響く中、俯き加減に背中を丸めて歩く女がひとり。向かう先は懺悔室。
    女は暗い面持ちで中へと入る。そしてか細い声で静かに話を始めた。
    ⚪︎
    私はキリスト教の信者ではございません。学生の頃はカトリックの......いえ、それはどうでもいいのです。
    もう時効です。
    私は法律で裁かれぬまま生きて来ましたが、神様にだけは信じてほしい、私の罪を告白します。

    私は夫を殺しました。

    本当です。夫は行方不明の扱いです。
    皆は私を頭のおかしくなった女だと哀れみます。でも私は確かに殺しました。
    他の女の元に行かれるのが嫌でお夕飯に毒を混ぜました。

    苦悶の声を上げて倒れた夫の身体を切断して、念入りに水で冷やしました。
    丁寧に温度を調整しますと屍体が腐らず蝋のように固まるのです。

    私は小さな洋服屋を営んでおります。
    店先にショウウインドウに男性のマネキンみえましたら、それは私の夫です。
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