• 「今日は少し涼しいな」
    僕はぼつりと呟いた。
    今年の夏は暑かった。一歩外に出ればぎらぎらと太陽が照りつけ、湿度の高い熱風が体を包み、容赦なく蒸し焼きにされるようだった。
    そんな暑さもこの数日は少しだけ和らいだ。頬を撫でる風は涼やかだ。

    「宿題終わった?」
    「まだ!やばい!」
    2学期を真近に控えた小学生が、大きな声で会話しながら通り過ぎる。
    耳をすませば近所の軒先に吊られた風鈴が、風に揺れてチリンと切なげな音を響かせている。
    青いプランターに植えられた観察日記用の朝顔は、しわくちゃになって枯れている。
    太陽に向かっていきいきと背を伸ばしていた向日葵は、茶色くなって頭を垂れている。

    トンボが一匹僕の体を掠めた。
    空を見上げると真っ青な空に入道雲が立ち込めている。
    まだ夏が生きていた。
    夏の終わりはどこか寂しい。
    強烈な暑さを振りまいていたのに、終わるときだけしおらしいのが憎らしい。

    もうすぐ8月も終わる。
    空をじっとみていると、夏に吸い込まれるような感覚を覚えた。
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