• ドリームアイドルフェスティバル決勝戦、本番1分前。対戦相手のステージを見守りながら、俺は出番を待っていた。

    彼のステージは何もかもが完璧だった。メリハリの効いたダンスに安定した歌声。
    終わった後の歓声は、舞台裏にまで響き渡っていた。

    ふと、自分の掌に目を向ける。指先は頼りなく震え、心臓が早鐘を打つ。
    大丈夫、大丈夫。迷いを断つようにぎゅっと掌に力を込める。
    練習はやれるだけやって、苦手な振付もしつこいくらい確認したんだ。
    あとは今日に懸ける思いを、僕自身の全力で表現するだけ。

    登場アナウンスがかかり、俺はステージへ進む。

    ーワアアアアッ!!!!!

    顔を上げると、観客は一層大きく轟いた。

    「さぁ、ここからは俺の時間だ。絶対に目を離すなよ?」
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