• タコ焼

    今、僕はオッサンだ。両親はもういない。人生を振り返る。
    5歳頃、料理人のパパが作ってくれた、粉とキャベツのタコ焼。僕は本物が欲しいとゴネて泣いた。3年後、両親が喧嘩。パパが家を出た。
    「ママを頼んだ。戻ってきたら、必ずタコ焼、食わせてやるからな」
    ママは、きっと帰ってくるわ、と寂しそうに笑った。
    この日。僕は、ワガママが人の人生を狂わせ、幸せを壊すことを知った。僕の願いなのだから、僕は自分でタコ焼を作ればいい。

    〜タコ焼現代史〜
    2048年
    オッサン誕生
    2050年
    タコ焼、世界的流行
    タコ、希少に。イカ偽装事件
    イカ入りはタコ焼風と明記
    タコ養殖盛ん
    2052年
    タコ焼職人技が国家資格になる
    受験資格は大阪で修行3年後
    全国のお祭り屋台100日実務が条件
    2065年
    タコ焼連合発足、本部は大阪城
    2085年
    大阪の元祖屋台のタコ焼、三ツ星に
    2100年
    屋台のオッサン、文化功労賞受賞
    式典の一言
    『混ぜこぜ人生、周り巡り、俺もすっかり丸くなりました』