「へぇー専用のボールなんてあるんだ」
体育館の倉庫から出てきながら、新しくクラスメイトになった彼に声をかける。
「あるよ。ほら、うちの学校、強豪校だから」
遠くから早く早くとせかす声が聞こえる。
僕が転校してきたこの学校は、ドッジボール大会でよく優勝するチームがある。その影響もあって体育の時間ではよくドッジボールをするらしい。
「だからって、ボール一個買うか普通?」
「だって練習しないと勝てないじゃん。公式の球でやらないと」
そういって彼は、ボールを投げる。クラスメイトとがそのボールをキャッチして、審判役を務める先生に渡す。ジャンプボールで始まるのは全国共通らしい。
それにしても、小学校に強豪校の概念があると思わなかった。それも、ドッジボールの。そんなことをぼーっと考えていると試合が始まった。
ビュンビュン飛んで行くボール。風邪を切るその音は、まるで前の学校の友達とよく遊んだ飛行機のおもちゃのようだった。
「ナイス!」
そんな声が、外野から聞こえる。
それにしても、ボールが早い。全身を使って避けるのがやっとで、キャッチすることなど不可能に思えた。
そうこうしているうちに、コート内の人数は一桁を切った。体力も奪われ、流石に避けるのもきつくなってきた。少しずつコート内の人数も減っていく。その時、ボールが僕の方向に勢いよく飛んできた。ボールを目でとらえる事は、出来ても避けきれなさそうだ。かといって、キャッチすることも不可能。そのまま当たると痛い、そう思って身構えていると、先ほどの彼が僕とボールの間に入ってキャッチしてくれた。
「ありがとう」
「うん」
彼はそれだけ言って、ボールを味方の外野に投げた。
結局僕は、そのあとすぐにボールを当てられてしまった。
「ボール、キャッチしてくれてありがとうね」
教室に戻りながら、彼に話しかけると。
「ま、あれくらいは余裕」
と、返された。
「流石だね。僕は一回もキャッチできなかったよ」
「いや、転校初日でラスト5人まで残っていたら上出来だよ」
そう言った途端、彼はくるって回っていった。
「言い忘れてた。日ノ丘小へようこそ」
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