「授業中、ぼーっとしているよね。いつも何考えているの?」
同じクラスの彼に聞かれる。日直が行う簡易清掃の仕事を終え、帰ろうとしたときに聞かれた。
「私の将来かな」
別に嘘ではない。誰がどう考えても、私はハードルの高いことを夢見ている。ただ、それを他人に言う予定はない。家族にすら言ってない。彼は、ふーんとだけ言った。
「将来、何になりたいとかは聞かないんだ」
大体の人は、聞いてくる。私はその度に、会社員になるんじゃない?って適当に答えている。
「聞くなって顔が言っている。そういう人に無理やり言わせるのは、なんだか違う気がするから」
彼は私の顔を見て言う。そうやって聞いてこない人は初めてだ。
「ゲームを作ってみたいの」
彼は怪訝そうな顔をする。急に話し始めたからだろう。
「私の夢は、アプデが来る度にトレンド入りさせるようなアプリゲームを作ること」
「ゲームを作るって簡単な事ではないけど。ましてや、授業中ぼーっとしてて勉強もできない人には」
「それは」
上から目線が腹立たしいかったけど、何も言えなかった。実際、成績はいい方ではない。
「どの分野からゲーム開発に携わりたい?」
「企画案とか?プログラミングとか?もしくは、キャラクタービジュアル」
「それなりに勉強が必要だな」
そう言いながら、彼はリュックから本を取り出した。企画の書き方の本とか、オリジナルキャラクターの描き方。小説の書き方の本まである。
「こういう本は、参考になると思う。貸すよ」
「え?あ、ありがとう」
「あと、俺からのアドバイス。教室で考えている事をノートに書くのはやめた方がいい。こういう事は言いたくないけど、アイデアを盗みやすくなる」
「将来、楽しみにしている」
リュックを背負った彼はそう言って、教室を出て行った。
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「法律家じゃなくて、ゲーム開発者になりたかったな」
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