スレ主
「海に行ってくる」
変わり者の彼女が、パーカーを羽織った水着姿でそう言った。空気で膨らませるボートを持って出かけようとしたのでさすがに僕は止めた。
ここから海はとても遠い。
彼女は自転車も持っていないし、自動車免許も持っていない。まさか電車で?その格好で?僕が問いかけると彼女はにっこりととびきりの笑顔を見せた。
「海まで川下りするの。面白そうでしょ」
神よ。
彼女がここまでアホの子とは思わなかった。大きなため息をつくと、彼女はふと真顔になった。
「ケイくんさ、浮気してるよね?」
「え?」
頭が真っ白になった。
「私が無事に帰ってこれたら、マユちゃんだっけ、その子と別れてね」
突然のことに頭がうまく回らない。バレていた。どうして。隠し通せていたはずだ。名前まで知っているなんて。
彼女は扉を開けて出ていった。
無事に帰ってこれたら。その言葉がようやく頭に入ってきた。
僕は彼女を追わなかった。
そして彼女は、何日経っても帰ってこなかった。
遺体は海で発見された。