• oEsAGg8月22日
    何もかも虚しいんだ。
    そう言った目の前の男は、ジョッキの酎ハイを煽りながら、焼き鳥を千切るように噛み付いていた。大変旨そうだ。
    「それが虚しいって顔かよ」
    「はっ。お前には分からんだろうな……俺の心には今カラカラに渇いた風が吹き、何をやってもまるで砂を掴むようなのだ」
    まるで砂漠だ……と呟きながら、また酎ハイを胃に流していた。
    どこが渇いた風だよ。レモン酎ハイの爽やかな風じゃねぇか。そうツッコミたかったが、この頭でっかちな友人には屁理屈で返されるだけなのである。喉元まででかけた言葉を、キュウリの漬け物で飲み込む。歯応えのある食感に幾ばくか溜飲も下がる。
    「あァ……虚しいねぇ全く」
    まーた言ってるよ。今度は鳥の塩焼きをつまみながらだ。どこが虚しいんだよ、これ全部俺の奢りにするくせに。
    「まったく虚しいよ」
    俺はそう呟くと「お前もとうとう分かるクチになったか」と先輩風を吹かせてきやがる。俺はポケットに入ったカラカラの財布を思い、重い溜息を吐いた。
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