• B1RzAt10月22日
    じゃがいもを入れ忘れた。
    私は鍋を見下ろす。この1LDKの部屋は私ひとりだけど、もしいたとすれば今にも屑となり消えそうな虚ろな表情に心配することだろう。今晩は絶対カレーを作ろうしようと決め込んでいて、いざ出来上がったのはじゃがいも無しのカレー──。それはカレーだけどカレーじゃない。私の求めていたものではない。第一私はカレー池にどっぷり浸かったじゃがいもが大好物なのだ。
    「そんなのカレーって認めない…」
    何やってるんだろう私。鍋はぐつぐつと煮えている。美味しそうな匂いが空腹をじわじわと刺激するけれど、気持ち大きめに切ったじゃがいもを鍋の中に放り込んでから、溶けこむのをじっと見守った。ぐつぐつと煮立つカレー。その上に散らばった黄色のじゃがいもは、悲しいくらい角張っていた。
    「お母さんのカレー、じゃがいもだけ大きかったなぁ」
    美味しくなりますように。
    そう唱えながらお玉を回していた亡き母を思い出す。湯気に目が刺激され、じんわりと熱くなった。
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