スレ主
その森は、遠くから見ると霧のようだった。
近づくにつれて、それが無数の透明な葉と枝だとわかる。
木々は音を立てずに揺れ、揺れるたび、ひかりが細かく砕けて空気に溶けた。
地面は鏡のようであり、空も木々いくつにも重なって映っている。
歩くと、かすかな鈴のような音がする。
葉の縁は薄く青く光り、幹の中には空気の層が閉じ込められていてひんやりする。
…だから森はいつも少しだけ冷たい。
ところどころに、透明でありながら灰色の植物が生えている。
この植物は百年に一度だけ花を咲かせるという噂があった。
花が咲くとき、誰かの心がひとつ、ここに残るらしい。
風が吹くと、森はさざめいた。
言葉にならない感情が、枝から枝へ伝わっていく。
名前がつかなかった思いの残響だ。
ここは、そんな感情の墓場であり、感情の生まれる森。
返信はまだありません。
この投稿に返信する