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ほげ
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左手の感覚が無い、頭はジンジンずきずきとした"鋭く鈍い痛み"を伝えてくる。
頭から流れ半ば固まりかけている血が、左のまぶたを塞いでいる。
──関係ない。
残った右の眼で相手を見る。
身体は見ない、人体は構造上、複数の箇所に痛みを感じない。
重要度の高い頭の傷が痛みを発しているから身体の痛みを感じないだけで、全身余すところなくボロボロであるということは理解している。
もし一度でも自分の身体を見て、どれだけのダメージを負っているのかを自覚したら二度と立ちあがれないという確信があった。
産まれたての子鹿ですらそこまではならないくらい、ガクガクする足を気力で抑え付けて踏ん張る。
相手は既に背中を向けていた。
そりゃあそうだろう、こんな状態で立ちあがれるわけが無い。オレだってそう思う。
──だからこそ許せない。
気配を感じたのかヤツが振り返る、整った──仮面めいて無表情な──顔に驚きと呆れの混じったような色が浮かんだ。
するとほげがあった。