スレ主
すみれが一輪、写真の上に咲いている。
最初は見間違いだと思った。だが何度瞬きをしても、何度手に持つ角度を変えて写真を見ても、間違いなく写真の上にすみれが咲いている。春の曙を柔らかに帯びた藤紫の花弁も、麗らかな日差しに佇む深緑の葉も、全てが瑞々しい。まさにたった今咲いたと言っても過言ではないような、そんな息吹を感じさせた。
何度目かの凝視をしてから、ため息をつく。
そもそもこのすみれは、写真から実体化して出てきた、という類のものではない。写真自体は何ということはない、昔旅行に行った際撮ったものだ。友人と二人で。
そう、あの頃は楽しかった。お互いに文を描き、絵を描き、そうして出来た作品について夜が更けるまで語り合った。空が白んでも瞳の輝きは薄れず、行こうと思えば虹の麓にさえ走っていけるように思えたものだった。
けれど、それももうない。この写真を最後に、全てが泡となって消えてしまった。
「ごめん、遠くに行きたいんだ」
何度も耳に蘇る声が、心を刺す。
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