• LQiKfw4月3日
    「保守します」

    今日も誰かが書いた文字を自転車で運ぶ。しばらく薄紫色の道を走ってから、彼は目的地に辿り着いた。今は誰もいない路地。その突き当たりの白い壁に、運んできた文字をぺたりと貼り付ける。
    正しい文字の並びになっているか、文字の形がずれていないかの確認を終えて頷く。今日の仕事はこれで終わりだ。再び自転車に乗り、彼は帰路を辿った。
    行きと違い、さまざまな文字を目にできるこの道が、彼は好きだった。色々なニンゲンの感情が壁に書かれている。それは誰かに宛てた手紙のようでもあり、まどろみの中に佇む一人の呟きのようでもあった。ただ一つ違うのは、「ほしゅ」「保守します」の文字だ。先ほど彼が運んで貼ったのと同じような意味合いの言葉を目にするたびに、彼は書き手のことを考える。
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  • スレ主(LQiKfw)4月3日
    これはニンゲン達の感情を繋ぐ言葉なのだろう。書かれた言葉達を他のニンゲンに遺そうとする、自分の感情を綴るのとはまた違う類の。現に何度か「保守します」と書かれた壁が、突き当たりではなく新しい道へと変化したのを見たことがある。陽射しの照る道の壁に、喜ぶようなニンゲンの言葉が貼られているのを見た時は、思わず顔が綻んだものだ。
    今日「保守します」を貼ったあの壁も、いつか新しい道になればいいなと思う。自分はニンゲンに出会うことはないけれど、喜びの言葉を見るのは嬉しいから。

    電子の道を行く自転車の車輪が、軽快な音を立てて回った。