Tters

Hja84J スレ主 2025年04月

─猫と元社畜と異世界と─
(前回タイトル間違えましたすみません)

小学校での一悶着のあと、異世界調停センターの2人と数人の警察官達は閑静な住宅街を
歩き、徒歩でで移動していた。
お巡りさんを見て手を振る小さな子に男性職員もついでとばかりに手を振りかえす。
数人の警察官のうち、1番若い警官がセンター職員たちをちらりと視線だけで観察する。
男性の方は警察官たちより頭一つ分背が高く、
威圧感があるが、常にへらへらと笑みを浮かべているせいか、あまりプレッシャーを感じない。だが、先ほどの笑みを消した時の冷たさを思い出し、軽く身震いをした。

Hja84J スレ主 2025年04月

女性の方は深々とフードを被っており、
顔が見えない。女性だと分かるのは
体型と、先ほどの声から判断した。
背は男性の胸元あたりくらいまでしかないが、
不思議な存在感を放っている。
ノリの軽い男性をたしなめたり、
児童への謝罪姿勢から
真面目な印象を受ける。
(こいつらが異世界調停センター職員か…)
若い警官が心の中で独りごちると、
職員2人が同時に観察していた彼に同時に
顔を向けた。
若い警官は思わずのけぞる。
「ねーそろそろ目的地かな?」
男性職員が彼に質問しつつ肩を組もうとしてきたが、女性職員はそれに先んじてその手を
はたき落とした。
「は、はい。そろそろかと」
連絡用のスマホで地図を確認し
2人に答える。

Hja84J スレ主 2025年04月

「そっかーありがとー」
男性職員はニコリと笑って礼を言う。
女性職員は
「気になるのは分かるがあまりじろじろ見るものじゃない」
と窘める言葉を彼に向ける。
「…すいませんでした」
若い警官は素直に謝罪した。
短い会話だったが、2人に得体のしれない印象を受け、警官たち全員の
背中に冷たいものが走った。
その後は黙々と皆歩き続け、
2台のパトカーと
『異世界調停センター』と書かれたバンが
止まっているマンション前に着いた。
「とうちゃーく、先来てるのって誰だっけ?」
「確か…」
その時、マンションの1室からガタガタッと大きな音がした。
先に来ていた警官が
「異世界誘拐が起こった部屋からです!」
と叫ぶと、職員の2人が光の円の中に消えた。
「!?」
「落ち着け、さっきのと同じ緊急移動陣だ」

Hja84J スレ主 2025年04月

数人の警官の中でも1番年嵩のいった警官が
動揺している者たちに告げた。
そんな中、誰ともなしにつぶやいた。
「中で何かあったのか…?」
その疑問に答えられるものは今は
そこにはいない。

職員の2人は迅速に緊急移動陣を発動させ、
件の部屋がある3階に飛んだ。
スマホで事件情報と部屋番号を確認し、
その部屋のドアを勢いよく開けた。
そこには─
同僚の男性センター職員が
泣き腫らした目をした女性に
馬乗りにされ、胸ぐらを掴まれていた。
その横には茶トラの猫が
男性職員に猫パンチを連続で食らわせている。
その光景を目撃した
全く正反対の2人の職員の心が1つになった。
「「えっ?修羅場?」」

Hja84J スレ主 2025年04月

─時間は遡り2人が突入するまで数時間前。
警察から要請を受け、1人の異世界調停センター職員の男性が事件現場であるマンションにバンで到着した。
仕立ての良いスーツに
カーキ色のロングコートを羽織り、
前髪をアップにしており、いかにもできる
雰囲気の男性だ。
マンション周りには野次馬の人混みが出来ていたが、警官の誘導で無事駐車出来た。
野次馬たちはバンに書かれたロゴにざわめいた。騒ぎになる前に職員はマンションの中に入っていった。
「お疲れ様です、センター職員どの」
見た目はゴツいが、礼儀正しい警官が
敬礼とともに出迎えた。
「ああ、遅れてすまない」
男性は謝罪しながら、事件の情報をスマホで確認し始めた。
「…被害者は猫?」
被害者情報のところで彼の指が止まった。
「はい、飼い主である女性が帰宅したところ、召喚陣が猫たちの下に発生していて、1匹は何とか助け出せたそうですが、もう1匹はそのまま…」

Hja84J スレ主 2025年04月

ゴツい警官はその太くてゴツゴツした指で
目にあふれた涙を拭った。
「猫が異世界誘拐に遭うのは初めてだな」
男性は涙を流すゴツい警官とエレベーターに
乗り、情報を確認し続ける。
「飼い主は数カ月前まであのブラック企業に勤めていたのか、今まで異世界誘拐に狙われなかったのが不思議だな」
スマホの画面には目元に大きなくまがあり、
人生に疲れてますと顔に書かれていそうな
女性の写真が表示されている。
「狙われやすい傾向があるのですか?」
「統計的に…現状に不満がある、世間一般的に不幸な者がよくさらわれているな」
ゴツい警官の疑問に男性は答え、
そしてスマホの上を滑っていた指が止まった。
「ん…?この名前は…」
「センター職員どの、3階に着きました」

Hja84J スレ主 2025年04月

ゴツい警官に声をかけられ、
職員はエレベーターを降りた。
2人は事件現場の部屋へ向かう。
部屋の中には異世界誘拐専門の鑑識が
情報を集めるため、陣の出たであろう
あたりで必死に痕跡を調べていた。
2人を確認すると手を止め
敬礼し、再び調べ始めた。
職員は何気なく部屋の中を見渡した。
部屋の所々に猫が過ごしやすいように細やかな気配りが見える。飼い主の女性は猫たちを大事に思っていたのが見て分かる。
それと同時に異世界誘拐を企てた奴等への
怒りも湧き上がる。
(もし、タイミングが違っていたら、ここまで猫を大事にしている飼い主をさらうつもりだったのか…!)
指先が白くなるほど手を握りしめ、怒りを抑える。

Hja84J スレ主 2025年04月

職員は深呼吸を1つして、決意新たに
事情聴取を受けている女性の元へ向かった。
女性は未だ涙を流しており、茶トラ猫を抱えながら、警官の質問に答えていた。
(…ん?)
職員は彼女を見て、
何か思い出しそうになったが、
「ふがっ!?」
急に顔に飛びかかってきた茶トラ猫に思考を 中断される。
「ご、ごめんなさい!!」
女性が謝罪しながら、
茶トラ猫をはがそうとする。
茶トラ猫は不満そうな鳴き声をあげ、
なんとか職員の顔から離れた。
「駄目でしょ、みたらし!」
茶トラ猫に女性が呼びかける。
(…!!)
職員はスマホを高速で操作し、
事件情報を再確認する。
拐われた猫の名前は『あんこ』
そして、今飛びかかってきた猫は『みたらし』

Hja84J スレ主 2025年04月

そして飼い主の名前は─
「東海七々子…?」
「はい、とううみです。よく読めましたね、
珍しいからなかなか正しく読んでもらえなくて」
無理して苦笑いを浮かべる東海七々子。
「あの…みたらしとあんこの団子が大好きだった…?」
「そうです。今でも好きなので、この子たちの名前に…あれ?」
東海七々子は首を傾げる。
目の前のデキる雰囲気の男性の顔をしげしげと見つめた後、
「あーーーっ!!?そうちゃん!?」
と大きな声を上げながら思わず彼を指差した。
「『そうちゃん』はもうやめろ、北城総司郎(きたしろそうじろう)だ」
「久しぶりー!そうちゃん!」

Hja84J スレ主 2025年04月

七々子は総司郎の言葉をスルーし、
そうちゃん呼びをする。
「だから…!」
「解析終わりました!」
言い争いになりそうなタイミングで
鑑識が2人に報告に来た。
みたらしは唐突に
その鑑識の脚の登頂を始めた。
「異世界コード『DN-9210』の召喚陣と思われます。まだ残滓が残っているので、痕跡を追うことは可能かと」
みたらしが登ってくるのを気にせず、
職務を全うする鑑識。
報告終了後、みたらしは鑑識の頭上に到達した。
周りの警官数人が顔を下に向け、笑いをこらえる中、七々子は『痕跡が追える』という言葉を聞き逃さなかった。

Hja84J スレ主 2025年04月

「ねぇ、そうちゃん」
「だからそうちゃんはやめろと…」
「痕跡が追えるってことはあんこを異世界へ探しにいけるってこと?」
「…」
「どうなの?」
仕立てのいいスーツの襟首をつかみ、
引っ張り寄せ、彼の顔を引き寄せる。
その顔は真剣そのもので、
総司郎は息を呑んだ。
「…可能だ。だが、危険すぎる。職員で異世界に向かえるものは少ない」
「だったら私が行く」
「何を言って…!」
七々子は襟首をつかんだまま、床に総司郎を引き倒す。その際大きな音が響いた。
そしてそのままその上に馬乗りになった。
「絶対に私が行く。あの子が私を救ってくれたんだ。今度は私が助ける番だ」
まだ赤い目に涙を溢れさせ、
必死に訴える彼女を諭そうと口を開こうとする総司郎。
しかし、その言葉はみたらしの連続猫パンチに遮られた。
そこへドアを開けて飛び込んでくるロングコートの男女。そして
「「えっ?修羅場?」」
ハモった声に総司郎は
「違う!!」と否定するのが精一杯だった。

第2章─再会と見えた希望─ 終わり

物語書いったー