• 例え僕の目の前のテーブル越しに、愛する人が笑っていたとしても、
    それは「無限分の一秒」過去の笑顔なのである。
    人間の実相は刻々と変わっていく。
    無限分の一秒前よりも無限分の一秒後には、無限分の1だけ愛情が冷めているかもしれない。
    だから肝心なのは、想う相手をいつでも腕の中に抱きしめている事だ。
    ぴたりと寄り添って、完全に同じ瞬間を一緒に生きていく事だ。
    二本の腕はそのためにあるのであって、決して遠くからのサヨナラの手をふるためにあるのではない。

    愛をひっかけるための釘「サヨナラにサヨナラ」/中島らも