• 怖くないけど。幽霊文化を感じた話。
    英国は冬、生ぬるい風が吹くときや嵐がくる。地元は幽霊や妖精の話が好き。ロンドンから戻った日、近所でお茶を誘われた。案の定、幽霊の話題になった。明け方からフワフワ飛んでいたらしい。
    「屋根の煙突にしがみついてたよ」
    「ぎこちない飛び方、初心者幽霊ね」「子どもの幽霊だな、お菓子の好きな」「幽霊にはクッキーが効くよね」
    帰宅際、同席した老夫婦から渡された、
    シーツ。私のだ。風で飛ばされたのを拾ってくれたらしい。
    「すみません、うっかり干したままに。あ。さっきの幽霊ってもしかして」
    「よく聞いてね。これはシーツ。」
    「はい?確かに。」
    「飛んだのは幽霊のせい。あなたではないわ。ああ、慣れていないのね。いいこと?あなたのするべきは、幽霊をどうするかでしょう?」
    子どもの幽霊にはクッキー。近所に配った、もちろん魔除けとして。