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一瞬逡巡してから、彼女はビニール袋をそっと引っ張る。するとビニール袋は宙に浮かんだ形のまま、ふわりと彼女の元に移動した。それ以降は手を離しても、見えない糸で繋がれたように、彼女の背後にのんびりと浮かび続けていた。
ゲームのカーソルか何かみたいだな、と思いつつも、道連れができたようで悪くない。とりあえず行けるところまでいこうと、彼女は足取りも軽く歩き出した。 -
「旅行、いけばいいんじゃね?」
何と言っても、世界は今時間が停まっているのだ。つまり好きなだけ寝ていてもいいし、好きなだけ遊んでもいいし、好きなだけどこに行ってもいい。これ以上時が進まない以上、仕事が追加されることもないのだから。
まあ流石に飛行機を使うような旅行ができるとは思っていない。でも歩いて行ける場所なら、何とかなるのではないだろうか。何かこう、昔の人も徒歩で旅してたはずだし。
「よし、そうと決まれば!」
彼女は勢いよくベンチから立ち上がった。そうして歩き出そうとして、ふと背後を振り返る。相変わらずビニール袋は、真昼の夢みたいに浮かんでいた。