• 母方の祖母の家は、古い一軒家だ。
    この家には、よく「手」が出る。
    細い真っ白な、指の長い手が、肘から先だけを出す。
    祖母が、そのまた祖母から受け継いだ鏡台。
    鏡台の上に赤い布がかぶせてあるのだが、その布の隙間から、細い白い手がすーっとのびる。
    そして、細い指先で鏡台を撫でるように動いて、また、すーっと布の中に姿を隠す。
    母も小さい頃から何度も見たといい、私も幼稚園ぐらいの頃から5回は見ている。
    怖くも、不気味でもない。
    それは白い手の動きが優しいからだと思う。
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