• 「えーと古賀時雨さん、君はそんなに私の授業が退屈かね?」
    古賀はこちらを一切見ずに答えた。
    「先生の授業は退屈ですよ。Vの発音なんて何でいろんな角度から見る必要があるんですか。」
     北野は中学生相手に怒りを覚えてしまったことを非常に情けなく思った。個性を重んじる教育、一人一人が自分らしさを発揮できるような教育者になりたいという自信の教育者としての野望は、実は薄っぺらい理想のような気がしてしまった。しかし、まだ教育者の卵であるので態度に出さないようにすれば、後にこの様な生徒に対しても本気でそれが個性であると思えるようになれば、私はまだ教育者としてあり続けられるだろう、そのように考えなるべく優しく諭すように言った。
    「そんなに気になるのなら窓からでも飛び降りて参加してきなさい。」
    少し嫌味を含んだ言い方になってしまったことを後ろめたく思う暇もなく、古賀は動いた。
    「ありがとうございまーす。」
    その瞬間、本当に3階の窓から飛び降りてしまった。
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