夜風は生暖かく、山々の暗がりの淵が月明かりに照らされる。ぽつりと照る中を眺めるのが好きだ。街の細かなノイズを自然の中から一望したり、高速道路からそれを見たり。そんな記憶だけは、まだ薄汚れた感情に塗れていないことを思い出すのだった。

それが例えブラウン管に映るものだったとしても、暖かな木漏れ日を思い出せるのならば構うことなどない。

春を感じさせる暖かい風が吹く。紅梅の蕾が咲こうとしている。凍える時はもう終わったのか

頭の中の諸々を出力するには言葉は脆弱

美しい言葉だけを並べて、熱い言葉だけを感じて、真実だけを追求して生きていたかった。いつも表に出す形は素晴らしいものだけを見せて、幸せを装って、過去には何事もなかったかのように。そうする程に、人々の有象無象の羨みは羨望の眼差しではなく、裏闇の嫉妬として影を落とす。自分の汚さと無力さに向き合った事もある。向き合う時間が長ければ長いほど苦しいだけだったが、その苦しさを手放さなかった。都合のいいスピリチュアルな思想に耽る友を見ては、弱い人間だ、あれは逃げだ、あぁはなりたくないと見下した。人々が私に嫉妬して、失敗すればいいと願うように、私の中のシャーデンフロイデは違う形で他人を己の中で貶めるのだ。優位だ。私は優位に立っている。されど咎人のように、己の心には中からも外からも、愚呂愚呂と汚い、辛い、苦しい、恐ろしいものが沸いて、押し寄せてくる。時間は同じ事が一気に起きないようにあるという。しかし私の記憶は感情と共にいつまでも消えない。-苦しみ

腹に抱える焦りが無ければ動くことが出来ない。でも苦い感情を感じるのと心が痛がるのを拒んで、逃げてばかりだ。随分と臆病な人間になってしまった。経験と過去は立派だが、今を頑張れない自分にはつけて歩く事も出来ない勲章の様なもんだ。すぐに自分は怠惰になる。自分を奮い立たせろ、心を奮い立たせろ。長い休憩時間は終わりだ。

ゆびさきでつめたい画面をなぞる夜

優しさの裏側にある残酷さ
好きの裏側にある嫌い

今宵は月や星が美しい。人の痛みや悲しみを吸い取り輝き続ける

流れ流れてここまできた。
そのうちにここも賑やかになるのだろうか。

きれいなものだけ表現していたい。深いテーマや突飛な感情表現だけでなく。そうすると、明るい雰囲気の短い作文はできるのだけど長い小説にはなってくれない。明るさは何より大切なものだと思う。だけどそれを表現することも私には難しい範囲だ。だからこそ重要なのかもしれない。明るさを大切にきれいな表現にしていくことが。そこから長い長編を書けたらいいと思う。一喜一憂せず、一つずつテーマを昇華していきたい

限界を感じた。そう言った君はまるで君じゃないみたいに変わってしまったね。僕は君が幸せなら良いんだ。君を応援している。でも、僕が好きだった君はもういないのかな。

儚くもあるかな、月影の…（ほしゅ）

これはにんげんの驚くところで、罵倒も感謝も練習していないと突飛に上手く言葉に出ない。逆に練習すればするほどに、細部が磨けてるな、と自分で実感している今日午後。
そしてその価値や質の高さを左右するのは経験だけでもないらしい。