• 腐れ縁と安い居酒屋で飲んで、別れて、一人の帰り道、なんかの気配がして、はっと振り返ると月が真っ赤に燃えていたんだ。信じてくれよ、あれはただの十五夜のお月さんなんかじゃなかった。けれどだれもそんな月を気にかける様子もない。黙々と家路についていた。おれは叫びそうになって、叫ばなかった。けれど叫びたかった。だって、月が燃えているんだ。なんで誰も気にしないんだ。狂っているのは自分か、やはり自分なのか。月を見ながら後ろ歩きになって、なにかにつまづいてひっくり返った。音が鳴った。おれは背中を痛めた。