• 「実は私、魔法少女なんだ」
    漫画やアニメで見るようなステッキを握った白と紫色の大人っぽい衣装が似合う魔法少女は儚い顔で笑った。
    高校二年目の春。彼女のピンク色に染まったボブヘアが桜の花びらと共に風に吹かれるのが綺麗だった。
    「……髪の色、似合ってるね」
    「あは、そんなことはじめて言われたや」
    ほんの少しだけ照れくさそうに笑う。眼鏡の右のつるを触る癖も、斜め下を見る瞳と揺れる睫毛も、本当は気にしている可愛い声もぜんぶそのままだ。
    一生懸命張り上げる声が不思議と人に訴えかける力を持っていることも、ぜんぶ。
    「あたしさ、小さい頃から強くて可愛い魔法少女達の事が好きだったんだ」
    「……幻滅した?」
    「まさか、ますます憧れちゃったよ。……ね、あたしもなれるかな? あなたみたいな魔法少女に」
    仲良くなりたいと伝えるつもりで差し出した手を、彼女は違わず握ってくれた。
    そして、睫毛を震わせてはつるを触りつつ。
    「……きっと、もうなってるよ」
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