• 王女の朝

    光へ導くもの
    彼女に与えられた名前

    田舎の朝は騒がしい
    鳥の声
    木々のざわめき
    目が覚めてもしばらくは
    ベッドにいること
    スケジュールを頭で反すうする
    窓からの光
    ノックの音
    身支度を整える係に礼を言う
    少しの冗談は覚えた
    すでに
    社交は始まっているのだ

    テーブルに着く前から
    食事マナー
    教育係から学んだ実技訓練
    座席までの歩きかた
    係りが引いた椅子
    座り方、ナイフとフォーク
    食べる仕草、音は立てないこと
    スプーンを落とした場合を
    復習する
    味は苦行でも
    その場では話さない

    幼い日の一言、マズイ
    言葉が多くを巻き込む
    運んだ人、味見をした人、
    作った人、彼らを雇った人
    全てに責任がかせられる
    彼らの家族、人生が崩れる

    彼女は学ぶのだ
    言葉の重さ、社会の成り立ち
    人の気持ちを
    全てが試練

    私欲はなくすこと
    感情を表さないこと
    いつも微笑みを
    産まれたときからずっと
    変えることができない道

    「私、生まれ変わるなら
    一般人になりたいわ」

    軽やかに笑う
    栗毛色の髪
    光が導く
    呪縛から解き放たれた朝
    RIP