•  結婚5年目の朝、妻に起こされて食卓に座る。なんでも大事な話があるのだとか。何の話だろうと、ちょっとドキドキしながら妻を見た。

    「実は私ね…あなたと同級生じゃなくて7歳下なの。」

    「えっ?」

    「結婚式に来てた両親と妹、友人は全員役者。」

    「は?」

     妻が長い黒髪をさらりとかき上げる。僕は呆然としながらその光景を見ていた。僕の大好きな、大きな黒い瞳と目が合う。

    「髪は本当は金色で目は青いの。国籍はベナン。」

    「いやいや…どこそれ?」

    「本名はボーワゲッタサラ•ディサーナーヤカ•ムディヤンサラーガー・ギハーン・サマンタ。」

    「なんて?」

    「ごめんね。長いからサラでいいよ。」

     優しく微笑む彼女の左手では結婚指輪が光っている。僕が彼女について本当に知っていたのは、左手薬指の指輪のサイズだけだったようだ。
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