• 世界は絶望で満ちていた。自身の絶望さえも他人事のように感じる程の空虚。

    聞き慣れた戦闘機の音もほとんど耳に入ってこない。
    耳が詰まったようにどこか遠くで起きてるような感覚。
    それはまるで溢れた絶望が鼓膜を突き破ってしまったかの様だった。

    「おなかすいたーおかあさん食べ物は?」
    耳を塞ぐ絶望さえ無視した声が聞こえた。
    機能しない鼓膜が、今この時だけ仕事をした。

    声の主は
    何も知らない無垢な子ども。何故かそれが私に話しかけてくる。
    物質不足の今、食料の確保さえ難しい。
    誰がこんな子供に。

    でも、少しだけ気が向いたようだった

    袋に入ったドロップ缶を無垢な子どもに渡す。
    「ありがとう!」
    と言うと子どもはすぐにドロップ缶を開けた
    ドロップを一粒、口に放り込むと
    幼い子ども──我が子──
    は、嬉しそうな顔をした。

    まだ、きっと大丈夫。
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