• 「これがナイスでないならば、いったいなにがナイスだっていうんだ」
    鴨川沿いで等間隔に並ぶ大学生のカップルを見ながら、おれはそう口に出した。夕暮れの鴨川には少し涼しい風が吹いた。太陽は沈みつつあった。おれはストロングゼロを一口あおった。上々の気分だった。
    隣に寄り添っていた女は黙っておれの手を握る。遅すぎた青春かと思った。これからおれたちの先には何もない。彼らには何かがあるかもしれない。ないかもしれない。
    でも、この夕暮れの一瞬は永遠なのだし、別れを寂しく思う必要もない。川は静かに流れていた。