• 「小説書いったー?」
    変な名前の書店、それが第一印象だった。近くに新しく書店ができたと聞いて場所だけ調べて来たはいいが、俺は類を見ない珍妙な店名に怖気づく。こんなことなら、下調べしてから友達でも連れて来ればよかった。
    店の外観は感じがいいものの、開店直後なのに人の気配はない。これで二十四時間営業なんてどうやって経営……まさか非合法なアレソレが、いやまさか。
    進むも戻るも躊躇って動けない俺の目の前で、唐突に扉が開いた。チリン、と小気味よく鳴るベル。一拍置いて穏やかな声がした。
    「本が欲しいんでしょう」
    「えっ、まあ。えっと、店員さんですか、店主さんですか」
    「本、ありますよ。本、書けますよ。難しいことじゃありません。どうぞ中へ」
    緩慢な笑みを浮かべたその人は、扉を開けたまま俺を見つめる。
    「あ、じゃあ……ちょっとだけ」
    書けるとはどういうことかと聞きそびれたことも忘れ、俺は誘われるままに店内へ足を踏み入れた。
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