• 「ディスコー!」
    MCが声を上げた。皆、無関心だった。ここはディスコでもないし、踊る場所でもなかった。崩れ落ちたビルの残害、泣く子供。破壊されたインフラが悲鳴を上げている。
    「セイ、ディスコー!」
    MCの声はさらにボルテージを上げた。それでもおれは母親の死んだ身体をコンクリートの隙間から引きずり出すのに精一杯だった。かたわらでは妹が泣いていた。父親の行方は、この戦争が始まってからようとして知れない。
    DJが、グルーヴィなサウンドを響かせた。おれは死んだ母親の腕を引っ張るのをやめて、音楽に聴き入った。
    「ディスコ、ディスコ、ディスコー!」
    おれは無茶苦茶に叫んで、踊り狂った。朝日が登るまで、そうしていた。