• fgwdze5月4日
    暗いところで待ち合わせ/乙一

    とても静かな物語だと思った。メインとなる2人は胸が詰まるような生きづらさを抱えていて、その境遇や都度の気持ちを思うと読んでいるだけでこちらまで辛い気持ちになった。基本的に人の悪意は過去にしかなかったけれどその悪意はなんともリアルでその苦しみはどろりと纏わりつくような苦みを持っていた。
    特に印象的だったのはアキヒロ視点のミチルを観察する場面で、淡々と静かに進んでいた文章の最後の1文で突然世界の音がよみがえったように感じた。こちらまでハッとして、知らず2人の生きる音の無い世界を覗かされていたような気持ちになった。
    読後感としては、彼らがこれから生きる世界が少しでも優しくあるよう静かに祈りを捧げたくなるようなものでした。苦しいけど優しくて、また読みたいと思う作品でした。おもしろかったです。