• 女にとって、不変こそが愛だった。
    人の心は幾度となく移り変わっても、金の価値、宝石の美しさは変わらずそこにあり続ける。
    金と宝石の煌びやかさこそが、女にとっての愛だった。
    女はある日、美しい男に恋をした。
    金と宝石を溢れんばかりに差し出して、「いくらでもあげるから」と関係を迫った。
    女にとって、これ以上ない"愛情表現"だった。
    男は冷たい目で女を見た。

    女は一人ベッドの上にいた。
    不治の病と診断され、積み上げた札束も宝石も、女の体の一助にさえならなかった。
    絶望する女の前に、あの時の男が現れた。
    男は女のベッドの上に、あの日女が押付けた大量の札束と光り輝く宝石を降らせた。
    男は呆然とする女に問いかけた。
    「札束の中の人間が、口を開いてお前を慰めたか」
    「その硬い石ころは、お前の涙を拭えるか」
    男の冷たい瞳の意味を、女はようやく理解した。
    男の瞳に映る軽蔑が、その時だけは憐憫と愛情に変わりゆく様を見て
    生まれて初めて女は、変わりゆくものに安堵を覚えた。
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