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カンダタ平民バージョン? -
「お先にどうぞ」
老婆が、か細い声で言う。人々はさも当然だという顔をして乗り込んで行く。
「おさきにどうぞ」
子供が、幼い声で言う。人々はほとんど無視するようにして足を進める。
「おさ、き、に、どう、ぞ」
病人が、息も絶え絶えに言う。人々はいっそういかめしい顔をして扉をくぐる。
ここに来た乗り物がどこへ向かうのか、気にする者は誰ひとりとしていない。どこに行くかではなく、目の前の乗り物に乗ることが目的だといわんばかりに、必死の形相をして乗り込んで行く。三人は、一便、また一便と乗り物を見送る。これが復路のない道行きなのだと、人々はまだ気づかない。