• 完璧な風景、という言葉が浮かんだ。

    秋晴れの美しい空の下、美しい人が銀杏の樹の下で空を見上げていた。木々の合間から射し込んでいる光、足元に広がる木の葉のじゅうたん、舞い散る黄色い木の葉。
    その全てが額縁におさめられた絵画のように尊く光り輝いていて、近寄りがたいのと同時になぜか涙が出そうなほど懐かしい風景のように思えた。

    やがてその人が立ち去ると、何も変わらないはずのその場所は明度が落ちたように見慣れた景色に戻った。
    何かが変わった訳ではない。だが、あの瞬間に立ち会えたことは小さな奇跡だったのだと思う。忘れないように、記憶の箱の中に今日見た風景をそっとしまい込む。

    生きていると、時々ふいに魂が震えるような風景に出会う事がある。次はいつどんな風景に出会えるのだろう。
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