• トラックに轢かれた。
    そこで記憶が途切れている。
    僕が目を覚ますと見知らぬ景色が広がっていた。草花がやけに鮮やかで、空も建物もリアリティがない。
    見知らぬ少女に声をかけられる。
    「もう!こんなところで寝てたんですか?!」
    頬を膨らませる少女は、容姿がまるで漫画のようだ。しっかりしてください!と少女が言う。僕は近場の水たまりを覗いてみた。 
    驚いたことに漫画のような容姿になっている。
    異世界転生。
    きっとそうだ。ならばこの世界を謳歌しよう。
    少し元気が出てきた。
    ──
    百合の花が敷き詰められた棺には、男子学生が眠っている。
    死因は事故死。飲酒運転のトラックに跳ねられ、即死だった。遺体の損傷は激しかったが、顔の部分は残っていた。
    棺の中には少年が好きだった漫画本も納められている。遺族の両親が涙を流している。 
    「可哀想に」
    「本当に。でも、見て。全然笑わなかったあの子が少し笑っているように見えるわ」
    もうすぐ棺は火葬場へと移動する。