• とある小さな銀行の銀行員が、大金持ちを銀行に呼び、狐のような顔をニヤリと歪めていった。
    「うちは小さいけれど、セキュリティは万全です。
    お金を預けてはもらえませんか」

    大金持ちは訝しんだ。
    「君のところはどうにも信用が置けない。
    事件だなんだって、幾度か新聞にも名が載ったじゃないか。」

    銀行員は自信ありげに言った。
    「けれど、盗まれたことは一度もありません。
    お疑いでしたら、今度人を雇って、夜にでも私の銀行へ盗みに来てください。
    金庫はこの部屋の横ですよ。
    そこに扉があるでしょう。」

    大金持ちはしばし考え、狸のように笑って頷いた。

    大金持ちと銀行員は、また金庫の隣の部屋にいた。
    大金持ちはやけに芝居がかった口調で言った。
    「君の金庫は、本当にセキュリティがしっかりしているらしい。
    全く素晴らしいことだ」
    拍手でも始めそうなほど大袈裟に褒めた大金持ちは、懐から小刀を取り出した。
    「しかし、難しいことじゃあない。
    君に持ってきてもらえばいいんだから。」
    大金持ちは小刀を突きつけて、またニヤリと笑う。

    銀行員は両手を上げて、おどけたような口調でこう返した。
    「まったく、そりゃあ名案だ。」

    狐のようににやりと笑い、そしてこう付け足した。

    「けどねぇ、金に目が眩んじゃあいけませんよ。」

    その後、大金持ちは別の部屋で待機していた警官によって取り押さえられ、殺人未遂で多額の賠償金を銀行へ支払った。

    今回もまた、銀行は新聞に載ったらしい。
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