• そんな季節になったので、いたる所でモッコウバラが咲いていた。
    柵に絡まるつるに、無造作に伸びた枝に、薄クリーム色の花が鞠のように集まって咲き誇る姿は愛らしく、目を楽しませてくれる。
    生家の庭のモッコウバラは今年も花を咲かせただろうか。母が家の周りをぐるりと一周させようと奮闘していた姿を思い出す。懐かしい家のバラは白かった。結局庭の柵一つ分しかつるが絡まないままあの家を母が去って、私も帰らなくなった。
    どこへ行っても、今年も終ぞ白いモッコウバラは見かけない。甘い芳香だけが、風に乗って私の背後から微かに香った。
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