•  通りゃんせ、通りゃんせ。ここはどこの細道じゃ。娘の髪を結いながら自然と口ずさんでいたのは、亡き祖母から教わったわらべ歌だ。「それ何のお歌?」これはね、貴女のように七歳を迎えた子をお祝いする歌なんだよ、昔は子供は永く生きられなかったから。そう説明すると、ふうん、と可愛い瞳をくりくりさせて曖昧な返事。鏡の先の娘はアレンジされた髪を揺らして満足げだ。私は鏡越しに笑い返す。子供が貴重なのは昔も今も変わらない。子供は大切に育てねばならない。正しく、健やかに。神様に取ってしまわれないように。だから七五三で祝うのだろう。「ねー、続き聞きたーい」。催促されるがままに私は歌の続きを歌う。天神様の細道じゃ…行きはよいよい…帰りはこわい…たどたどしくも歌い終わると、からん、ころん、と下駄が鳴った。はっとして顔を上げると娘はそこに居なかった。「鏡越しにこの歌を歌っちゃいけない」。床に落ちた髪飾りに呆然としながら、亡き祖母の言葉を私はやっと思い出した。
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  • スレ主(Xd4Zg4)2022年11月19日
    タイトル「ななつのおいわい」

    修正箇所があったので再投稿させて頂きました。
    ♡下さった方、すみません。