• たかが数円のざらめじゃないかと言われたら反論出来ないわけだけど。
    毎年足を運んで、買うものと言えば毎回同じだ。いちご練乳のかき氷、フライドポテト、クレープは生クリームで。それでもふらふらと
    混み合う通りを二往復くらいした。私は歩くのが遅いからそうしているうちに日が落ちている。
    だからもう花火の時間よ。私は食べかけのクレープ片手に川沿いのほうへ寄って空を見上げた。静かなんだか賑やかなんだか分からない、遠巻きの喧騒が不可思議に満ちている。
    きぃーっと金属が軋む音に振り返ると鉄橋の上で電車が緩やかに停車していた。いつもはけたたましい音を立てて通り過ぎるそいつが同じように花火を見つめているのを眺めていると、何故か私はちょっと泣きそうになる。いつも。
    たかが数円のざらめじゃないかと誰かが言っても、あの小さい砂糖粒がこんな風に膨らむのだから魔法みたいで愉快じゃないか。と。
    お賽銭気分で五百円玉を渡して、提灯代わりにぶら下げながらのんびりと帰路についた。
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