• Tter主(B243WI)2022年6月29日
     見てほしいものがある、と言ってスマホを突きつけられる。見せられたのは、真っ暗な写真だ。だが、よく見ると、服を着た人のような輪郭が見える。どうやら、ほぼ画面いっぱいに人間の胴体が写されているらしい。
     目の前に立つ人の腹をズーム撮影したり、思い切り手を伸ばして近寄れば撮れるだろう。そんな構図だ。
    「なにこれ?」
    「いや、これ私の部屋なんだけど、幽霊出るの幽霊」
     彼女曰く、その幽霊は三日に一度必ず現れるらしい。玄関を開けると、廊下を背に立ち尽くしたままゆらゆらと揺れている。数秒後に──パッ、と消えてしまうのだと。
    「別に不幸になったとかないんだけどさ、嫌じゃない?」
    「それ撮って人に見せるほうがよっぽど嫌じゃない?」
    「いや、でもね、撮る前は毎日だったのが、撮ってから三日に一回になったのよ。カメラって魔除けになるのかも」
    「なにそれ……」
     いるだけだからいいんだけど。というぼやきで怪談は終わった。
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  • Tter主(B243WI)2022年6月29日
    ──電気消し忘れてる。しかもカーテンも締め忘れてる。ほんと最悪。
     歩道から見上げた私の部屋の窓は、暗闇の中で嫌味なほど輝いていた。足音をたてないように階段を上がって、ドアノブに鍵を突っ込む。
     ドアを開けた私の目の前に広がったのは、暗闇だった。足がすくむ。手足が冷たくなる。背筋の毛が逆立ちそうだ。よせばいいのに、思わず目を凝らす。
     そいつは、リビングを背に廊下に立ち塞がっていた。ゆらゆらと揺れながらただ立っている。
    「あのォ──……」
     そいつが唸る。再現VTRの悪役みたいな加工音声だった。そこで気がついた。彼女の写真よりも、そいつの胴体が狭く、背が低いこと。
    「あのォ──……」
     パタパタと蛇腹を開くようにそいつの腹が伸びていく。僅かばかり残された隙間を埋めるように、廊下の幅いっぱいにそいつの体が広がっていく。
     眼前が真っ暗になって、はたと思い出す。写真で撮ったら三日に一回になったの。カメラは魔除け?違う、感染されたんだ。

    「あのォ──」
  • Tter主(B243WI)2022年6月29日
    小説書いったーさんに投稿したのをここにも上げるなど…