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──電気消し忘れてる。しかもカーテンも締め忘れてる。ほんと最悪。
歩道から見上げた私の部屋の窓は、暗闇の中で嫌味なほど輝いていた。足音をたてないように階段を上がって、ドアノブに鍵を突っ込む。
ドアを開けた私の目の前に広がったのは、暗闇だった。足がすくむ。手足が冷たくなる。背筋の毛が逆立ちそうだ。よせばいいのに、思わず目を凝らす。
そいつは、リビングを背に廊下に立ち塞がっていた。ゆらゆらと揺れながらただ立っている。
「あのォ──……」
そいつが唸る。再現VTRの悪役みたいな加工音声だった。そこで気がついた。彼女の写真よりも、そいつの胴体が狭く、背が低いこと。
「あのォ──……」
パタパタと蛇腹を開くようにそいつの腹が伸びていく。僅かばかり残された隙間を埋めるように、廊下の幅いっぱいにそいつの体が広がっていく。
眼前が真っ暗になって、はたと思い出す。写真で撮ったら三日に一回になったの。カメラは魔除け?違う、感染されたんだ。
「あのォ──」 -
目の前に立つ人の腹をズーム撮影したり、思い切り手を伸ばして近寄れば撮れるだろう。そんな構図だ。
「なにこれ?」
「いや、これ私の部屋なんだけど、幽霊出るの幽霊」
彼女曰く、その幽霊は三日に一度必ず現れるらしい。玄関を開けると、廊下を背に立ち尽くしたままゆらゆらと揺れている。数秒後に──パッ、と消えてしまうのだと。
「別に不幸になったとかないんだけどさ、嫌じゃない?」
「それ撮って人に見せるほうがよっぽど嫌じゃない?」
「いや、でもね、撮る前は毎日だったのが、撮ってから三日に一回になったのよ。カメラって魔除けになるのかも」
「なにそれ……」
いるだけだからいいんだけど。というぼやきで怪談は終わった。