•  「クリスマスが今年もやってくる~」
     と、浮かれた歌を歌うのは私の父。この時期になると必ず口ずさむ。いそいそと仕事道具を鞄に目一杯詰め込む様は、まるで遠足前の子どものようだ。
     「あれ、このあとなんだっけ」
     「しらない」
     「娘が冷たい~」
     この雪みたいにさ、とは余計な話だろうに。それに毎年教えても忘れる方がよっぽど冷たいと思う。温度のない態度の私に、温もりしかない手でぐりぐりと撫でてくる。
     「帰ってきたら、たんとお話ししようね」
     「…………」
     「さてと、お仕事がんばってくるね」
     そういって父は外に向かう。外に負けないくらい真っ白な袋と、目が覚めるような赤い服を着て。
     「サンタクロース、行ってきます!」
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