スレ主
町の古い時計店「月影」店主の宗次郎は、老いた手で懐中時計を磨いていた。風が窓を叩く晩秋、店の扉がチリンと鳴り、青年の亮が入ってきた。
「じいちゃん、これ…直せる?」
亮は傷だらけの時計を差し出した。宗次郎の目が細まる。それは亮の祖父で宗次郎の戦友、健一の形見だった。
「預けておけ」宗次郎は静かに頷いた。
夜、宗次郎は時計を分解した。錆びた歯車、止まったゼンマイ。戦場での健一の笑顔が蘇る。
「宗次郎、生きて帰ったら、酒を飲もう」
だが、健一は帰らなかった。宗次郎は歯車を磨き、時を呼び戻すように手を動かした。
翌朝、亮が店に来ると、時計は軽やかに時を刻んでいた。
「すげえ…! じいちゃん、ありがとう!」
亮の笑顔に、宗次郎は目を潤ませた。
「健一の魂が、そこにあるよ」
亮は時計を握り、焼け野原へ走る。
祖父の声が聞こえた気がした。
宗次郎は店で一人、健一の写真を見つめた。
「約束、守ったぞ」
時計の秒針が、静かに響いた。