• y9kHXg5月6日
    返信先: @自分 2

    ある日の昼下がり、店の扉がチリンと鳴り若い女性が入ってきた。都会的な雰囲気の彼女は、緊張した面持ちで小さな木箱を差し出す。
    「これ…祖父の懐中時計なんです。動かなくなっちゃって。直せますか?」
    宗次郎は箱を開け、傷だらけの銀の懐中時計を取り出した。蓋には、かすれた「K.T. 1945」の刻印。第二次大戦の頃のものだろう。彼は静かに頷いた。
    「預からせてください。命を吹き込めるか、試してみましょう」

    女性、彩乃は地元出身だが東京で働くOLだ。ゴールデンウィークで実家に帰省し、祖父の遺品を見つけたのだという。「祖父は戦争に行った人で…この時計、大事にしてたみたいなんです」と、彼女は話した。

    その夜、宗次郎は時計を分解した。錆びついた歯車、止まったゼンマイ。だが、彼の目は輝いていた。時計は単なる機械ではない。持ち主の人生を刻む、物語の器だ。宗次郎は丁寧に錆を落とし、歯車を磨き、ゼンマイを巻き直した。作業は朝まで続いた。
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