• WZ5bZQ5月7日
    町の小さな支店「波風銀行」は、朝の静けさに包まれていた。時計の針が9時を指す頃、行員たちはカウンターで最終確認に追われる。金銭を扱う銀行では、ミスは許されない。皆が細心の注意を払う中、この男は違う。その名は、佐々木だ。

    佐々木は毎朝遅刻する。今日も9時10分、ガラス扉を押し開け、のんびり入ってきた。「おはようございまーす」と明るく挨拶するが、係長の中村の雷が落ちる。「佐々木! また遅刻か!何度目だ!」
    「いや〜、ばーさんが重い荷物持ってて、見てられなくて運んであげたんですよ」佐々木は頭を掻き、笑う。
    「言い訳するな! 次遅れたらクビだぞ!」
    中村の怒鳴り声がロビーに響く。
    周りの行員たちは呆れ顔だ。「また佐々木の言い訳か」と囁き合う。特に真面目な行員の林は、ため息をつきながら書類を整理していた。
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  • スレ主(WZ5bZQ)5月7日
    ゴールデンウィーク明けの水曜日。営業開始直後の9時5分、黒いマスクとサングラスで顔を隠した男が銀行に押し入った。手に持つ拳銃を振りかざし

    「全員動くな! 金を出せ!」

    と叫ぶ。客と行員たちは凍りつき、カウンターの後ろで震える。林は膝を抱え、中村でさえ青ざめて黙り込む。

    その時、扉が勢いよく開いた。
    「おはようございま…へっっっくしゅい!!!」
    佐々木の派手なくしゃみがロビーに響く。
    飛沫が強盗の顔に直撃。
    「汚ねえな!」強盗が顔を歪める。
    「あー、コロナかも」
    佐々木は鼻をすすり、能天気に笑う。
    「なんだと!?」強盗の声が震える。

    林が震えながら呟いた。
    「今朝、佐々木さんから体調悪いから遅れるって連絡きました…」
    彼女の青ざめた顔が、信憑性を増す。
    「本当にコロナだったんだ…」
    「そういや、顔色悪いぞ…」
    他の行員たちが囁き合い、強盗は拳銃を握る手に汗をかく。
  • スレ主(WZ5bZQ)5月7日
    悠斗の近くにいた彼は、飛沫を浴びた恐怖で震え上がる。強盗に来て、死病に感染するなど想像もしていなかった。

    「ち、チクショー…お前、絶対許さねえぞ!」強盗は震える声で捨て台詞を吐き、慌てて逃走。ロビーに静寂が戻る。

    「いやー、危なかったっすね〜」
    佐々木が頭を掻きながら近づくと、行員たちは一斉に後ずさる。油断は出来ない。コロナの疑いは晴れていないからだ。
    「お前、コロナって言っただろ…」
    中村が恐る恐る言う。
    「冗談ですよ、冗談!」
    佐々木は笑うが、誰も信じない。
    「信じられるか!」
    中村の声に、他の行員が無言で頷く。

    「仕方ないな〜。じゃあ測りますよ。これでコロナじゃないって分かるでしょ。林さん、体温計貸して」
    佐々木が手を伸ばすと、林は嫌そうに非接触型体温計を差し出し、素早く手を引っ込める。感染を恐れているのだ。
  • スレ主(WZ5bZQ)5月7日
    佐々木は額に当て、ピピッと音が響く。
    「35.5度!」
    皆が安堵の息を吐く。だが、係長の目が光る。

    「ってことは仮病じゃないか!」
    「いや、朝はちょっと熱っぽかったんですよ〜」
    佐々木の言い訳に、中村の説教が始まる。
    「お前、毎度毎度…!」

    説教が長くなりそうなので、林はこっそり警察に通報した。

    強盗は病院に駆け込み、コロナの検査を受けた。結果は陰性。不貞腐れて病院を出たところで、待ち構えていた警察に逮捕された。

    事件後も佐々木の遅刻癖は直らない。翌朝も9時15分に現れ「じーさんが道に迷ってて、送ってったんですよ」と笑う。中村は「クビだ!」と怒鳴るが、何故か解雇には至らない。行員たちは呆れつつ、どこかで思う。あの日の佐々木のくしゃみが、皆を救ったのだ。

    波風銀行のロビーでは、今日も時計の針が静かに時を刻む。佐々木の笑顔と中村の怒鳴り声が風に混じる。