• 「あの、あのね、ぼくは、僕は君を邪な目で……そりゃ見たことはあるけどね、別に二人っきりになりたかったとか、恋人同士になりといとか、そういう事は一切無くてね、ただ、ただね。美味しそうだなあ……と思ってね。いや、いや本当にやましいことは無くてね。無いんだよ。ただね、君が本当に美味しそうに見えたから。ミスコンで見かけてから家を特定してずっとタイミングを図ってたんだ。いや本当に美味しそうだ」
     まるで綺麗だとでも言うようにまくしたてた先輩はそう言って私の脳天へナタを振り下ろした。
     私を執拗に付け回しストーカーとなってもなおこうして誘拐までしてまで私は美味しそうに見えたのだろうか。
     そんな先輩のただひとつの誤算は、私が不死身であるということだろう。
     ナタを頭に付けたままムクリと起き上がった私を見た先輩の顔は今まで見たこともないキョトン顔でなぜだか胸がキュンとした。
     なるほど、ロマンスの香りがした。
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